好きな漫画の話

割烹の料理人と庭師のふたりの物語なので、舞台は割烹と庭を行き来します。
飾り切りの鮮やかさとか、ひとつひとつの料理が上品ですわ……。松露ってはじめて知ったし、くわいの炊合せ…くわい? あっ 何か見たことあるし、多分食べたことあるな!? これくわいって言うんだ!
自分の知識の無さと照らし合わせながら美味しそうな料亭料理を拝んでいます。
主人公が料理人なので「お店でお客様に出す料理」と「ふたりで美味しく食べたい料理」が区別されているところも好き。

一話ずつ料理の話と庭の話が交互にあって、片方の話で見えていた伏線がもう片方の話で種明かしされたりという構成を楽しむことも出来るんですが、とにかく料理も庭も情緒が豊か。
この情緒ってどこから出てくるんだろうと思うと、多分画面を構成している風景やそれこそ材料もすべて名前とそれに伴って季節があるからだと思う。
庭ではシジュウカラが鳴いているし、止まってるのはきっと梅。お茶の湯気がよく見える季節。
食卓には柚子胡椒や山椒粉があるところも好き……1ページずつの背景を噛み締めてしまう……。

改めてゆっくり読み返してみると、料理パートと庭パートって日常と非日常パートとも言えて、その緩急の美しさにもため息が出てしまう。
主(ヌシ)や物の怪の住む夜の庭に、水の満ちた手水鉢に映る月だとか、暗闇のさらに暗いところから湧き上がって払われるナニカであるとか。
そこから人の営みでもある調理や料理、個人と個人に戻ってくる切り返しが良いなあ。

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