魔女の家

ものを食べて種を芽吹かせる魔女と、魔女の食事を管理する調理師のお話。

魔女の家|一次SS

 トレモはこの時期採れないから乾燥粉末で代用しよう。野苺ならジャムにしたものがある。麦粉に指定はないから、これも今残っているものでどうにかなる。サカの花は帰りに摘んで、余った分は干しておこう。ああ、あとルベルの苗。水、水 …
La Juneau shilagh ラ・ジュノー・シーラフ

ヒトを拾った人外と、人外に拾われたヒトの只の生活日記

03.蜜酒|一次SS

開け放した窓から風が吹き込み、垂らしていた布をまきあげる。 布にうずもれるようにしてチハヤが寝こけている。 こいつの為に用意した寝所は何だったのか疑問が過ぎる。 見れば、顔の側にネイアンが置いていった紐閉じの本が転がって …

02.茶会|一次SS

長らく留守にしていたネイアンが戻るという報せが届いたのは今朝だった。 中央の図書に用事があるとだけ言い残し、ふらりと消えていた。 ネイアンが留守にするのは大抵が突然のことで、戻るのも突然のことだ。 帰り際にこちらに寄るら …

01.ジュノーの日記|一次SS

03/30 ユンファへ届け物をした帰りに拾い物をする。 杜の中に転がっていたそれは、鳥ではなく獣に近い姿をしていた。 獣と樹を足して割って、それでもまだ何かが足りないような姿だ。 なぜ私の杜に落ちていたんだろう。 ニーバ …
お題もの

物書きさんのチャットにお邪魔してお題をもらってちまちまと書いてます。

バンパネラの夏|一次SS

「でも死ぬには死ぬんでしょう?」 「だと思う。死んだことないから分からないけど」 「私もないけど」 テーブルには氷の溶けたアイスコーヒーと水が並ぶ。低いソファ席の下で重ねられた足元には鮮やかな水色をしたエナメル製のヒール …

名を呼んで|一次SS

 生きているのかと問われれば首を振るしかないけれど、居るのかと問われれば頷くことは出来る。今、私を動かしているものが、血液や鼓動では無いことも知っている。かつてそうやって動いていたことすらもう忘れて久しい。あなたは今日も …

盲目の恋|一次SS

 すっかり白くなった灰に泥を混ぜ合わせ、枯木の皮をひとつまみ。薬草を混ぜておくと少しばかり保ちが良くなる。  発掘しておいた骨をこりこりとすり鉢で砕く横で、僕の可愛いゾンビがまだかまだかと口を開けて待っている。その口中は …

いちばん長い夜|一次SS

 月も星もない、ただただ群青の冴え冴えとした夜だ。  わずかな明かりが雪あかりに滲みながら点々と連なり、山裾へ消えていく。 あの山には熊が、あの湖には銀の鱗を持つ魚が眠り、木々はその枝先に氷をつけていた。 人々は四角く小 …

収穫|一次SS

「良いか、まずこの犬を退けろ」 「え、大丈夫だよ。抜かないよ、そんな前時代的な」 「じゃなくて! ヨダレ! 食いもんじゃねえんだよ! お前こいつに餌やってんのかよ!」 「あげてるよ、毎日手作りのご飯あげてるよ。僕より良い …

芽吹く帆船|一次SS

 その船では、髪の毛を切らないのが習わしなのだそうだ。  床に届きそうなほどに長い髪を束ねた大人たちと、ゆるく波打つ髪を跳ねさせながら走り回る子どもたち。邪魔ではないのかと聞くと、何故邪魔になるのかと聞き返された。彼らに …

笹舟|一次SS

 夢を見ていた。  わずかにあけられた障子の向こうから聞こえる蝉しぐれ。握っていた金魚柄の団扇の先で、風鈴の影が揺れる。まだ滑りやすい青々とした畳の座敷を走れば、欄間のふくろうが私を睨めつけた。土間には竈に向かう母の後ろ …

幸いたる|一次SS

 もう随分ながいこと歩いてきたのだと思う。少なくとも、彼にとっては。  すっかり擦り切れたローブに穴の空いたブーツ。貧困を課したことなど一度もなかったように思うけれど、敬虔な彼らは余る富は身を滅ぼすのだと、まるで競うよう …

リサイドイド|一次SS

reside-oid(リサイドイド )[編集] 市民権を得て自立生活を行うアンドロイド。イドを抜いた「リサイド」と表現される(※1)こともある。 □申請から取得まで [編集] 申請はアンドロイドから行われ、受理・審査後に …

ばら咲く庭で|一次SS

「ここ、間違えてらっしゃいますよ」 「日付で良いのよね?」 「ええ、日付には暦ではなく、お生まれになってからの日にちを記入ください」 「ああ……そう、そうだったわね。ええと……」 「72と42日でございますよ」 「そうそ …
その他短編

即興小説トレーニングだったり、他の短編。

黄金の子守|一次SS

 かしずくことはさして苦ではないの。それなりに扱い方も覚えてきたし。まだ知らないことも大層多いけれど、それはこれから覚えていけば良いことだわ。  肌着は生成り。淡く漂うミルクの匂い。毛はまだ揃っていないようで、笑い声は庭 …

手は届くのに心は遠かった|一次SS

 手は届くのに心は遠かった。  手を伸ばしてくれているのはあなただし、もし僕のこれが心と呼ぶようなものであれば、という話だけど。僕を熱心に読み耽るあなたの目元はとても懐かしいもので、僕を支える手はかつて僕に触れていた手に …

とてつもない朝|一次SS

 22時。夜食に買ったカップ麺にお湯を入れてからとうに15分は過ぎた。またたっぷりスープを吸ったふやけた何かを食べるはめになる。目の端でのびていくカップ麺を確認しながらも、私はまだモニターから目を離せないでいた。コードを …

私のペン|一次SS

 「これと、こっちの黒いのと、あと前に買ったのはまだある?」  小さな瓶詰めが並ぶ店のカウンターであれこれと指をさすと、店主は慣れた様子で瓶詰めを棚から取り出して私の前に並べる。瓶詰めの中では色とりどりのインクがたぷたぷ …